木材供給安定化計画

六次産業化によるサプライチェーンを築き 

より安定した木材供給体制を

国産材生産者が再植林できる価格でサプライチェーンを構築し、林業経営を持続可能なものに!

2021年、外国産材の輸入量減少と価格高騰により発生したウッドショックは日本各地で深刻な建築資材不足を引き起こし地域工務店の存続に大きな影響を与えた。

課題の本質は日本の住宅業界の木材事情

古くからの日本の林業のあり方や製材業及び木材流通業の脆弱さが大きく起因していると考えられる。林業における原木生産量とその価格の不安定さ、中山間地域における林業の担い手不足など深刻な問題も多く抱えている。

林業画像
国産材(京都地域材)流通の現状

京都府は、三重県に比べ地域材出荷量が3割程度少ない。また、製材としての利用率を比較しても大幅に少ないことが見てとれる。一方、消費の観点から県別一戸建て住宅着工数に着目すると、京都府の一戸建て住宅着工数は三重県の一戸建て住宅着工数に比べ約2倍となっている。他府県への構造材や製材の出荷量が圧倒的に多いのは三重県であり、京都府内における地元地域材の利用率や供給体制が十分でないことが伺える。

三重県・京都府の地域材供給量

原木生産(川上)から住宅建築(川下)まで 木材が安定的に供給される流通体制の仕組みを実現 

3ハイウェイサプライチェーン

近畿から東海まで周辺地域を巻き込んだネットワークを構築。

万一外材供給が途絶えた場合でも、向こう半年は資材の影響を受けることなく住宅着工が可能となる。

ネットワーク
モデルケース
国産原木供給量日本一の物流ルート
モデルケース

流通面で有効な伊勢自動車道、名神、新名神など最新高速道路網の活用も想定。資材中継地点としても有効な三重県亀山市のプレカット会社とも連携し、国産材の長期的安定供給を目指す。

減災にも!

連携を常態化させることで、災害発生時の応急仮設住宅建設用木材供給網としても機能。また、地域の林業を活性化させることで土砂崩れなど災害を減らすことにもつながります。

Solution 取り組み

取り組み

1

ICT情報共有による流通の安定化と発注予測の共有

流通の安定化
プラットフォーム

必要な材、スケジュールを事前にチェーン内で共有することで、実際に該当住宅物件が着工し木材が必要になったときに安定的に納品することができる。

構造材などの木材は伐採搬出、乾燥、その他と総合的にある程度の時間を要するため、需要情報を入手してすぐに原木伐採搬出から納品できるものではありません。そこで、すぐに活用できる木材製品のストックを準備し、その中から使用量をピックアップ、その後、需要量を補塡するというストック型の流通体系確立します。

発注予測の共有
発注予測共有の仕組み
  • 工務店ごとの受発注のボリューム(年間)の把握が可能になる
  • 月単位に受発注の週予測を蓄積・集計が可能になる
  • 各工務店の予測変動率を割り出す
  • 予測変動率を分析すると、ある程度の未来予測が可能となる

蓄積データが増えるほど予測精度は上がります。割り出した発注予測はWeb上でご確認いただけます。

ICT技術の活用により、在庫状況の確認や流通した数量など、材のトレーサビリティーを常に管理・共有。木材の需要量と供給可能量、半年先までの材料発注量、在庫状況、製材やプレカット業者の加工スケジュールなど様々な情報がデータとして蓄積されていき、その結果、精度の高い発注予測が可能となります。発注予測を活用し、より安定した木材流通体制の仕組みを確立します。

2

3週間近く前倒しで発注予測ができる体制を構築

グループ内で発注される構造材の情報について、確認申請業務を担当する設計事務所と連携し、確認申請前の段階からプレカット会社に情報を提供。着工予測をよりリアルタイムで把握できます。

3

国産材に適した構造設計検討会

外材に比べ強度が低い傾向にある国産材は、従来のスパン表でプレカット発注を行うと安全面のリスクを有します。一方で、構造材は過剰材積となる可能性もあるため、許容応力度計算を積極的に導入すると同時に、外材と国産材を同一物件で許容応力度計算により比較シミュレーションを行います。また、当団体が連携するウッドピア市売協同組合では、機械等級JASの認証材も常時豊富に在庫があるため、これらの国産材の強度に合わせた構造設計も踏まえてモデルプランの検討に活用しています。

構造設計検討会

4

国産材原木市場とプレカット工場の現場見学(三重県)

グループ内で現地見学会を行い、参画するプレカット会社、原木供給業者について各会社の特徴や強みなど実情を把握し、川上側事業者の目線に立った流通改善をグループの活動として認識し、組織力の向上に努めます。

5

定期的グループミーティング

月1回のグループミーティングを行い、各事業体の課題について検討・実行・検証し、グループ全体の活動を永続的に進めます。

グループミーティング

6

グループの協定推進と締結

グループ全体が協力し、密接な情報共有と地域に密着した木材安定供給を前提に、年間発注棟数に見合う材料の確保と急激な価格変動に対する対応を盛り込み、参画する各事業者間で協定締結を行います。

製材所

事業実施の効果

サプライチェーンのリスクヘッジ

安定的な木材流通を実現するサプライチェーンの構築と災害時における応急仮設住宅の連動は全国各地で必要とされるもので、当グループを構成する全ての事業者にとって大きなリスクヘッジになる。本事業で整備される安定的な木材流通体制システムを全国の工務店が入会する当団体JBN全国工務店協会内で模範とし共有することで全国規模で推進され、国内の住宅産業と林業並びに木材加工産業の持続的連携と発展に寄与できるとともに、災害発生前から応急仮設住宅対応流通体制の整備の一翼を担う事業である。

大工育成塾と次世代の工務店

今後、木材安定供給が大きな課題となるとともに、当団体が取り組んできた大工育成塾においても本事業の活動が果たす役割は大きい。現時点で参画する工務店5社からのスタートだが、2年後には京都府内で20社〜30社までの会員増強を図ると同時に、大きなグループとして、価格面でも川上側の業者と協力連携できる体制を目標とし、さらに大工後継者の育成支援に協力していく。